ATPは子宮収縮の促進作用があり子宮平滑筋において分子生物学的にATP受容体の存在が報告されたが、その収縮促進機序は明らかではない。我々は子宮収縮の周期性に関与している非選択性陽イオンチャンネル(以下NSCC)を報告してきたが、今回ATP受容体の電気生理学および薬理学的性質と収縮制御における役割を検討した。実験は妊娠18-21日のラット子宮より単離した平滑筋細胞からパッチクランプ法により電流を記録した。 ATP(0.01-1mM)により活性化された電流は矩形電流で膜電位-40mVでは10-500pAの大きさであることより、妊娠子宮には高密度のATP受容体が存在することが推測された。電流は細胞外Na濃度に依存しており、阻害剤である100μMのスラミンとPPADSにより抑制されP2X受容体電流と考えられた。P2X受容体の1価イオンの透過性はCs>K>Li>Naの順でありNSCCとは異なっていた。この電流はNSCCと同様に静止電位-50mVにおいて内向きであることよりペースメーカー電位発生機序と推測された。また、細胞外Mg0.01-10mMの投与によりこの電流は濃度依存性に抑制されることより、Mgの子宮収縮抑制機転と考えられた。 妊娠ラット子宮平滑筋細胞にはP2X受容体が存在し、陣痛の周期性制御に関与しマグネゾールの子宮収縮抑制機序のひとつであることが示唆された。
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