新しく発見された摂食調節因子の性機能へのクロストークの解明

2003 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 14571566
• 研究機関: 徳島大学
• 研究代表者: 松崎 利也 徳島大学, 医学部, 講師 (70294692)
• 研究分担者: 苛原 稔 徳島大学, 医学部, 教授 (20160070) ; 安井 敏之 徳島大学, 医学部・歯学部附属病院, 助教授 (40230205)
• キーワード: 摂食調節因子 / オレキシン / グレリン / GnRH / LH

研究概要

今年度の計画通り検討を行い、以下の結果を得た。
1 摂食促進物質オレキシン、グレリンの生殖機能と摂食機能に対する急性および慢性的な影響
[方法]1)両側卵巣摘出後の成熟雌ラットを用い、第3脳室内にオレキシンA 3nmol、グレリン1nmol、生理食塩水を投与し、投与後2時間にわたり連続採血してLHのパルス状分泌を検討した。2)ラット脳室内に浸透圧ミニポンプを用いて持続的にオレキシンA(3nmol/日)とグレリン(250pmol,2.5nmol/日)、生理食塩水をそれぞれ14日間投与し、その間の摂食量およ膣スメアによる性周期の観察を行った。[結果]:1)オレキシンA、グレリンを卵巣摘出後ラットの脳室内投与すると、投与30分後の平均LH値は低下し、投与後2時間にわたりLHのパルス状分泌の頻度は抑制された。2)オレキシン、グレリンを慢性的に脳室内持続投与したラットの膣スメアによる性周期の周期性は保たれており、血中LH濃度にも有意差はなかった。[結論]急性投与ではオレキシンAとグレリンは摂食量を促進し、LHのパルス状分泌を抑制し、一方慢性投与では摂食を促進するものの性周期に対する影響はなかった。摂食制限で見られる性機能抑制は摂食促進因子の亢進に加え、血清レプチン値の低下など、他の要素も関与していることが示唆された。
2 オレキシンの生殖機能と摂食機能に対する作用の神経学的機序の検討
[方法]両側卵巣摘出後の成熟雌ラットを用い、第3脳室内にオレキシンA(ORX-A)3nmol、生理食塩水投与(C群)、ORX-A3nmol脳室内投与(O群)、NPY抗体5μlの投与10分後にORX-A3nmolの第3脳室内投与(ON群)の3群で施行した。1)摂食実験:暗期に脳室内投与を行い、2時間の摂食量を測定。2)生殖実験:明期に脳室内投与を行い、30分後の血清LH値をRIAにて測定し、C群を100とした百分率で比較した。[成績]暗期2時間の摂食量は、C群0.81±1.01g(mean±SD)に比べ、O群1.98±0.99gと有意に(p<0.05)高値であったが、ON群では0.82±0.92gとORXの摂食促進効果が解除された。一方、明期ORX投与30分後のLH値は、C群の100±30%(n=12)に比べ、O群では72±23.5%と有意に(p<0.05)低く、ON群では93.9±23.3%と、ORX-Aによる性機能抑制作用が減弱した。[結論]ORXのGnRH抑制作用も摂食促進作用と同様にNPYを介している経路が存在する。

研究成果

• [文献書誌] Michiko Tezuka: "Effects of leptin on gonadotropin secretion in juvenile female rat pituitary cells"European Journal of Endocrinology. 146・2. 261-266 (2002)
• [文献書誌] Hirokazu Uemura: "Serum osteoprotegerin/osteoclastogenesis-inhibitory factor during pregnancy and lactation and the relationship with calcium-regulating hormones and bone turnover markers"Journal of Endocrinology. 33・5. 353-359 (2002)
• [文献書誌] Toshiyuki Yasui: "The herbal medicine Unkei-to stimulates the secretion of a cytokine-induced neutrophil chemoattractant, CINC/gro, in the rat ovarian cell culture"Am J Reprod Immunol. 49・1. 14-20 (2003)
• [文献書誌] Toshiyuki Yasui: "Stimulatory effect of the herbal medicine Keishi-bukuryo-gan on a cytokine-induced neutrophil chemoattractant, in rat ovarian cell culture"Am J Reprod Immunol. 50・1. 90-97 (2003)
• [文献書誌] Masayo Yamada: "Serum leptin levels in women throughout life ; Relationship to body mass index and serum estradiol levels"Jpn J Reprod Endocrinol. 55・1. 55-60 (2003)
• [文献書誌] Toshiyuki Yasui: "Serum estradiol concentration as measured by HPLC-RIA and bone mineral density in postmenopausal women during hormone replacement therapy"Horm Res. 61・3. 117-125 (2004)