研究課題/領域番号 |
14571571
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
石丸 忠之 長崎大学, 医歯薬学総合研究科, 教授 (20039580)
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研究分担者 |
カーン カレク ネワズ 長崎大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 助手 (60336162)
藤下 晃 長崎大学, 医学部・歯学部附属病院, 講師 (70190030)
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キーワード | 子宮内膜症 / サイトカイン / 増殖因子 / マクロファージ / HGF |
研究概要 |
平成14年度では子宮内膜症例の腹水中には多量のHGFが存在し、これが内膜症病巣の発育進展を促すことを明らかにした。一方、子宮内膜症では腹水中に多量のMφが存在し、そのMφが様々のサイトカインや成長因子を産生分泌し、妊孕能を阻害していることが指摘されている。そこでHGFとMφの関係を検討した。Mφの組織浸潤程度は赤色病変、黒色病変および白色病変の順に低下し、HGFの発現強度と極めて良く相関した。また正所性子宮内膜症組織中のMφの浸潤は対照に比し、内膜症の方が明らかに増加していた。この結果、子宮内膜症ではより多くの子宮内膜浸潤Mφが腹膣へ流入することになる。また組織中のMφの浸潤度はHGFとc-Metの発現強度とよく相関した。このことから、HGFの産生にはMφが関与している可能性が推測された。そこでMφ活性化促進因子であるLipopolysaccharide(LPS)負荷実験を行った結果、内膜症Mφの反応増加率は対照に比し明らかに高く(339% vs 144%)、HGFの分泌予備能亢進が認められた。この成績からMφがHGFを分泌していることが示唆され、それを確認する為にMφにおけるmRNAの発現をRT-PCR法で検討した結果、MφにHGFmRNAおよびc-Met mRNAの発現が認められた。以上の事からMφはHGFを産生分泌し、かつ、そのreceptorがMφに存在することが確認された。また本年度は内膜症とダイオキシンの関係も検討した。即ちマウスで自家移植子宮内膜症モデルを作成し、これにTCDD(ダイオキシン)を単独あるいはエストラジオールとともに投与し、エストロゲンレセプターおよびTCDDの受容体であるアリルハイドロカーボン受容体(AhR)の発現を免疫組織学的手法を用いて検討した。その結果、嚢胞径は、卵巣摘除で有意に減少しE2投与で有意に増大したが、嚢胞径の変化率にTCDDの影響を認めなかった。AhRの発現はTCDD投与で増強したが、それらにE2の影響は認めなかった。ERの発現は、E2投与で有意に減弱し、間質のER発現はTCDDの影響を受けていなかったが、管腔腺上皮におけるERの発現はTCDD投与で有意に増強した。以上のことから、TCDDはAhRを介して細胞特異的にER発現へ影響することで病変へのエストロゲン作用を変化させ、上皮の細胞増殖や分泌といったエストロゲン作用に対して細胞特異的に異なる効果を持つことが示唆された。この事は、ダイオキシンの子宮内膜症病変に対する直接的な作用を示唆するものである。
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