研究概要 |
女性では閉経後エストロゲン欠乏が主因となり,骨密度が急激に低下する。骨代謝でのリモデリング周期には個体差が大きく多様性を示すため閉経後の期間とは関係なく骨量喪失率は個体によりかなり異なる.骨密度の変化には,身体的因子,環境因子,遺伝的因子などが影響を与え,相互に作用して骨粗鬆症発症に関与するため将来の骨粗鬆症発症・骨折の高危険群を効率よく選別することは骨粗鬆症予防を考える上で重要である。今年度はエストロゲン代謝酵素が直接骨密度・骨密度変化率に与える影響に焦点を絞り検討した。骨密度はDXA法にて、腰椎、大腿骨、橈骨遠位端を毎年測定した。同時に昨年度検討したエストラジオール(E2)、テストステロン(T)、アンドロステンジオン(AND)、デヒドロエピアンドロステロン(DHEA)、性ホルモン結合グロブリン(SHBG)などの血中性ステロイドホルモンと遺伝子多型との関係も再解析した。初年度に同意の下ヘパリン加にて採取したリンパ球より抽出したDNAを用いて自然閉経女性を対象に遺伝子多型を検討した。遺伝子多型としてはRestriction fragment length polymorphism(RFLP)にてエストロゲン受容体αのPvuII、Xba I、エストロゲン代謝酵素;CYP17(エストロゲン生合成、高活性A2/A2)、CYP1A1(水酸化、高誘導性vt/vt)、COMT(不活化、低活性L/L)を解析した。CYP17、CYP1A1,COMTの遺伝子多型とも各allelleの分布はHardy-Weinberg平衡と一致した。それぞれの遺伝子多型内の3群間で背景因子に有意差はなかった。エストロゲン代謝酵素の遺伝子多型の骨密度に与える影響をみると、CYP17遺伝子多型のA2/A2を有する女性の総大腿骨骨密度低下率はA1/A1,A1/A2を有する女性よりも有意に低かった。COMT遺伝子ではH/Hを有する女性の橈骨骨密度の低下率はL/L,L/Hを有する女性よりも有意に低値であった。CYP1A1(vt/vt,vt/wt,wt/wt)遺伝子多型3群間では骨密度・骨密度変化率では差を認めなかった。性ステロイドホルモンでは、DHEA値はCYP17遺伝子多型のA2/A2を有する女性ではA1/A1,A1/A2を有する女性よりも有意に高い傾向が観察された。以上より我々の4年間の研究を総括するとエストロゲン代謝酵素の遺伝子多型は直接的あるいは性ステロイドホルモンを介して聞接的に骨密度、骨密度変化に影響を及ぼしている可能性が示唆された。
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