ヒト精子受精能におけるカルシウム依存性システインプロテアーゼであるcalpainの意義と生精子細胞中のcalpain活性測定法を開発し検討した。 被検者同意のもとに健常男性精子を実験に供した。HTFを用いionomycin添加による精子内カルシウムイオン濃度をFura2-AMとFruo3-AMを用いた蛍光顕微鏡及び共焦点レーザー顕微鏡で観察した。calpainの活性動態を不活性前駆体と活性型に対するペプチド抗体を作成し免疫染色法及びSDS-PAGE、Western Blotting法で検討した。calpain活性は膜透過型蛍光合成基質(Suc-Leu-Leu-Val-Tyr-AMC)を用い蛍光マイクロリーダーで測定した。calpainの受精能への関与をcalpain inhibitor (Z-Leu-Leu-H)添加Hamster testで検討した。 ionomycin添加によりカルシウムイオン濃度の増加が観察された。免疫染色法とWestern Blotting法でも不活性前駆体型抗体による染色性の低下及び活性型抗体による染色性の増加が観察された。calpain活性がionomycin添加で増加しcalpain inhibitorで濃度依存的に抑制された(IC50=10nM)。Hamster testで精子侵入率がcalpain inhibitorで濃度依存的に抑制された。 ヒト精子のcalpainが細胞内カルシウムイオン濃度の増加により活性化され受精において重要な役割を演じている可能性が示唆された。このProtease Activity Assay法は他の合成蛍光基質を用いcaspase familyやcathepsin family等の測定法にも応用され得ることが可能であると考えられる。
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