研究概要 |
1)母体中胎児由来有核赤血球細胞(FNRBC)のenrichmentに関する検討: 比重遠心法+フローサイトメトリー(FACS)により4.2倍、比重遠心法+磁気細胞分離装置(MACS)により2.9倍の分離濃縮が可能であった。ただしFACSによる方法では胎児細胞sortingに要する手間と細胞喪失などの欠点があった。 2)MACSおよびnested-PCRを用いたFNRBC検出法による胎児性別判定試験: 第1三半期(17例):男児と判定した9例のうち、実際の性別が男児であったのは9例であり偽陽性例は1例も認めなかった。女児と判定した8例のうち、実際女児であったのは6例であり、実際の性別が男児であった偽陰性例を2例認めた。特異性(Specificity)は100%,感度(Sensitivity)は81.8%,陽性的中率(PPV)は100%,陰性的中率(NPV)は75%であった。第2三半期(13例):男児と判定した5例のうち、実際の性別が男児であったのは4例であり、偽陽性例を1例認めた。女児と判定した8例のうち実際女児であったのは4例であり、実際の性別が男児であった偽陰性例を4例認めた。特異性は80%,感度は50%,PPVは80%,NPVは50%であった。第3三半期(19例):男児と判定した13例のうち、実際の性別が男児であったのは7例であり偽陽性例を6例認めた。女児と判定した例のうち、実際女児であったのは2例であり、実際の性別が男児であった偽陰性例を4例認めた。特異性は25%,感度は63.6%,PPVは53.8%,NPVは33.3%であった。全妊娠経過のうち1^<st> trimesterにおいて一番高率にFNRBCを検出する事が可能であった。 3)Laser scanning cytometryによるFNRBC定量測定: 充分なるインフォームド・コンセントにより同意を得られた、過去に妊娠歴のない男児を分娩した正常妊婦24例(A群:妊娠5〜13週[n=10]、B群:妊娠14週〜27週[n=6]、C群:妊娠28週〜38週[n=8])および切迫早産例(D群[n=5])の末梢血10ml中のY染色体を蛍光標識し、その陽性細胞数を肉眼およびLSCにて測定して比較検討した。LSCによる測定値と手動検鏡測定値との間には強い相関(r=0.955)を認めた。母体末梢血10ml中のY染色体陽性細胞数はA群(手動:12.9±4.5個、LSC:16.1±5.5個)、B群(手動12.3±6.5個、LSC12.3±6.9個)、C群(手動4.00±1.5個、LCS4.38±2.9個)であり、A群でのLSCによるFNRBC検出数が一番多かった。切迫早産例のD群(手動:20.4±4.3個、LSC:20.6±4.4個)では正常例全体(手動:9.79±2.6個、LSC:11.25±3.1個)と比較してFNRBC数は増加していた。
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