女性のリプロダクティヴヘルスに影響を及ぼす環境因子、環境物質に関して注目されるようになってきたが、そのなかでもことに、ダイオキシンは催奇形性物質であるとともに、微少な量で子宮内膜症の発生、性分化、生殖細胞の形成に対して影響を及ぼすと考えられている。われわれは、生殖器などの形態形成に関わる重要な遺伝群の一つであるHox遺伝子の変異・発現解析パネルを作成を行うとともに、内分泌攪乱物質であるダイオキシンに注目して、ダイオキシン関連遺伝子群の検出とその遺伝子多型の解析を行った。 Hox遺伝子群は子宮および膣などの女性生殖器の発生にも重要な役割を果たしているため、ホルモン依存性の形態形成異常、子宮筋、子宮内膜由来の病巣におけるHox遺伝子群の発現は病態の基礎をなしている可能性がある。われわれは、Hox遺伝子群の変異・発現解析パネルを作成した。 内分泌攪乱物質のダイオキシン関連遺伝子群として、ダイオキシン受容体(AHR)、ダイオキシン受容体核内転位因子1(ARNT1)、ダイオキシン受容体核内転位因子2(ARNT2)、ダイオキシン受容体抑制因子(AHRR)などの遺伝子多型の検出を行った。 また、われわれは遺伝子データベースを用いた解析により、一定の遺伝子に関連して変動する遺伝子群を検索する方法を開発してきたが、この方法を、ダイオキシンレスポンシブエレメントに応用し、ダイオキシンレスポンシブエレメントが関連している遺伝子群のスクリーニングを行った。子宮内膜症、および子宮筋腫の発症が確認されている患者の末梢血よりDNAを抽出し、ダイオキシン関連遺伝子の遺伝子多型解析について解析を行った。今回検討した症例においては、子宮内膜症の発症、および子宮筋腫の発症に特異的な単一遺伝子の遺伝子多型部位はAHR、AHRR、ARNT1においては検出されなかった。
|