研究概要 |
平成14年度は、以下の実験的検討を行った。 1,GFP-H1ooを用いたFRAP(Fluorescence Recovery After Breeching) H1ooおよび体細胞型のH1cをClontech社のEGFP発現ベクターに組み込み、NIH3T3細胞に一過性に強制発現させ、FRAPを行った。その結果、卵子特異的リンカーヒストンH1ooは、体細胞型リンカーヒストンに比べ有意に短時間でGFP蛋白が回復することが明らかとなった。これは、H1ooが卵子内で高速に結合、離会を繰り返していることを示しており、受精の際に急速に精子核に取り込まれる結果とあわせ、H1ooの遺伝子リプログラミング機構への関与の可能性が強く示唆された。 2,体細胞クローニング時の体細胞核におけるH1oo蛋白の挙動 体細胞クローニングでは、除核された卵子細胞質内に体細胞核を移植することによりクローン動物の発生をみる。この際に体細胞核をリプログラミングし、正常に発生させるためには卵子の細胞質が必要であり、その遺伝子リプログラミング機構が細胞質内に存在していると考えられている。除核された卵子に体細胞を融合させ、発生させる段階でのH1oo蛋白の動態につき検討を加えた。H1ooは、卵子に融合後数分間で体細胞核に発現し、2細胞期まで核内に発現が認められた。これは、以前に観察された正常受精過程におけるH1oo蛋白の発現時期に一致していた。したがって、体細胞クローニングにおける遺伝子リプログラミングにおいてもH1ooが重要な役割を果たしていることが示唆された。
|