研究概要 |
体細胞核移植における卵子特異的リンカーヒストンH1ooの発現 平成14年度より体細胞核移植クローン胚を使用し、H1foo蛋白の発現の検討を開始した。また、除核卵子にGFP-H1c発現細胞の核移植を行い、体細胞型リンカーヒストンの移植胚における動態を観察した。H1foo蛋白は、GV期卵、MII期卵、核移植後、2細胞期の核に発現を認めたが、4細胞期には消失した。従ってH1ooは、卵子形成から体細胞核移植後配偶子の遺伝子発現が開始するまでの間、体細胞核に取り込まれ、局在していることが確認された。また、体細胞核移植数時間後に、体細胞型リンカーヒストンが消失することが確認された。 GFP結合H1oo, H1c蛋白の作成とFRAP法を用いた染色体への動的結合の検討 平成14年度にGFP-H1oo, H1c融合ベクターを制作し、H1oo, H1cを恒常発現した3T3細胞を作成した。14年から15年にかけて共焦点レーザー顕微鏡を用いてGFP-H1oo遺伝子の染色体結合動態についてFluorescence recovery after photobleaching(FRAP)法により検討した。FRAPによる解析により、H1oo-GFPは、コントロールである体細胞リンカーヒストンH1c-GFPに比べ50%recoveryが22秒と有意に速く、また、動的成分も92%と有意に高値を示した。従って、卵子特異的リンカーヒストンH1ooは、体細胞型リンカーヒストンに比べ、動的成分が多く、きわめて短時間にクロマチンに結合、解離を繰り返していることが示唆された。以上の結果より、卵子特異的リンカーヒストンH1fooは、クロマチン構造を柔軟にすることによって、卵子の核成熟・初期胚発生を誘導していることが明らかになった。
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