研究概要 |
原因不明の胎児脳神経障害の原因として、我々は胎内死亡を惹起しない程度の臍帯血流遮断による虚血-低酸素→再還流障害の存在を想定し、その細胞障害の要因の一つと考えられる活性酸素(superoxidc)発生の主経路であるhypoxanthine→xanthine→uric acidの代謝過程を遮断する目的で、xanthine oxidase阻害剤であるallopurinolを経母獣的に投与し、その胎盤、血液脳関門の通過性、活性酸素産生抑制効果、母-仔に対する副作用などについて検討した。 妊娠羊を用い羊胎仔慢性実験モデルを作製し、問歇的臍帯血流遮断時における胎仔血圧、心拍数、脳波、行動(呼吸様運動)を連続的に記録、胎仔血液ガス、pHを測定した。 母獣にallopurino(400mg,2時間)を経静脈的に投与し、allopurinolとそのactive metaboliteであるoxipurinolの母獣血中濃度、胎仔血中濃度、脳透析液中濃度を経時的にHPLCにて測定し、2時間値で胎仔脳透析液中においてもallopurinol 0.32±0.12μg/ml, oxipurinol 0.53±0.22μg/mlと良好な移行性を確認した。また投与中、投予後において母獣血圧、心拍数、胎仔血圧、心拍数、脳波周期、血液ガス所見の変化は認められなかった。 また実際の活性酸素産生抑制効果を確認するため、3分毎に1分間の間歇的臍帯血流遮断を施行し、胎仔脳透析液とウミホタルルシフェリンによる化学発光を観察し、その増強(superoxideの発生)を確認した時点でallopurinolを母獣に投与したところ化学発光の明らかな抑制を確認した。
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