研究概要 |
本年度は臍帯血流遮断時において、胎仔脳神経障害の発症因子の一つであるhydroxyl-radical(HR)産生について観察し、ついで母獣にHR scavengerであるMCI-186(3-methyl-1-phenyl-2-pyrazolin-5-one)を投与し、子宮内治療の可能性を検討した。 方法として羊胎仔実験モデルを作成し、脳深部白質にはbrain microdialysis probeを設置した。3頭に3分毎に1分間の間歇的臍帯血流遮断を1時間、4頭においては10分間の持統的臍帯血流遮断を施行した。透析液として5mM Sodium salicylateを用い、透析液を採取し、HR attackの指標となる透析液中の2,3-dihydroxy-benzoic asid(2,3-DHBA)をHPLC法にて測定した。他の4頭には10分間の血流遮断時終了直前からMCI-186 60mgを母獣大腿静脈より投与しHR産生抑制効果の検討に供した。 結果として(1)臍帯血流遮断前のコントロール期の2,3-DHBA温度は23.09±10.93nMであった。(2)間歇的臍帯血流遮断時においては遮断中、遮断後の2,3-DHBA温度に有意の変化を認めなかった。(3)持続的遮断群の2,3-DHBA濃度は遮断終了時に40.05±21.3nM、遮断後93.4±24.21nMと有意に上昇した。(4)MCI-186投与群の遮断後2,3-DHBA濃度は29.35±8.31nMと明らかな抑制を認めた。 MCH-186は経胎盤性に臍帯血流遮断・再灌流時における胎仔脳でのHR産生を抑制することが判明し、子宮内治療の可能性が示唆された。
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