研究概要 |
本年度は臍帯血流遮断時の胎仔脳神経障害の発生、ならびにhydroxyl-radical(HR)scavengerであるMCI-186(Edaravone:3-methyl-1-phenyl-2-pyrazolin-5-one)を母獣に投与し、その脳神経障害の抑制効果を病理学的に検討した。 7頭の羊胎仔実験モデルを作成した。3頭は10分間の臍帯血流遮断を実施後3日目に胎仔脳を摘出した(A群)。一方、2頭においては10分間の臍帯血流遮断終了直前からMCI-186 60mgを母獣大腿静脈より投与したうえで同様に臍帯血流遮断実験3日後に(B群)胎仔脳を摘出した。別の2頭はsham operetion群(C群)とし術後3日目に胎仔脳を摘出した。作製したパラフィン切片に,ヘマトキシリン・エオジン染色、ボディアン染色、クリューバー・バレラ染色(ルクソール・ファースト青染色)、さらにTUNEL染色を実施した。二人の病理医に各症例の処置を知らせず、脳室周囲、基底核、海馬における脳神経障害についての評価を依頼した。 その結果(1)A群においては核の好酸性濃縮を示す神経細胞、microgliaの増生ならびにTUNEL陽性細胞の出現が確認された。(2)B群においてはmiclogliaの増生は認められるも、明らかな虚血性変化は確認されなかった。(3)C群ではとくに病理学的変化は認めなかった。 すなわちMCI-186は経胎盤性に臍帯血流遮断・再灌流時における胎仔脳で神経細胞障害発症を抑制する可能性が病理学的に確認され、虚血・再灌流時における子宮内胎児治療の可能性を証明した。
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