研究概要 |
本年度は羊胎仔慢性実験により、繰り返し臍帯遮断による虚血・再還流負荷モデルを作成し、胎仔心虚血・再還流負荷時の胎仔心室血アデノシン濃度と心筋バイアビリティーの評価を行うことにより、胎仔虚血心筋におけるハイバネーション現象の制御機構に関し検討した。 [方法] 妊娠125-130日のウエスタン種妊娠羊8頭を用い、羊胎仔慢性実験モデルを作成し、術後7日目に以下の実験をおこなった。 (1)可変式オクルーダーにより5分間の臍帯圧迫を30分毎、計4回実施し、経時的に心室血を採血しアデノシン,ヒポキサンチン、血液ガス,pH,5'-ヌクレオチダーゼ活性,トロポニン,血小板凝集能を測定した。 (2)繰り返し臍帯圧迫による血圧変動に伴う胎仔冠血流量を経食道的超音波ドプラ法にて計測、ドブタミン(10μkg/分)を負荷後、左室局所壁運動の変化を心エコー法で経時的に観察した。 [結果] (1)繰り返し臍帯圧迫30分毎計4回を施行後、アデノシン,ヒポキサンチン、5'-ヌクレオチダーゼ活性,トロポニン活性は経時的に上昇した。 (2)繰り返し臍帯圧迫による血圧変動により、胎仔冠血流量は変動し、ドブタミン(10μkg/分)負荷後、左室局所壁運動はパラドキシカル運動を呈した。 [結論] 胎児心筋において、冠灌流圧・冠血流量が低下した場合は、活性化した内因性アデノシンにより心筋はなるべく心収縮性を抑制し、心筋酸素消費量を低下させ、ハイバネーション状態を維持することによって適応している可能性が示唆された。
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