研究概要 |
インターロイキン18(IL-18)と神経分化との関連を調べた。マウス胚性細胞腫細胞(EC細胞)は、マウスblastcystに移植すると正常に組織を構築する多分化能をもつ細胞で、胚性細胞(ES細胞)に近い性格を持つ細胞系として用いられる。P19を培養しレチノイン酸を処理すると約7日で神経突起を出し、10日で突起がネットワークを結んで神経分化の形想をとる。神経分化がおこったことは、神経分化に特異的なマーカータンパクや遺伝子の発現(myelin basic protein, neurofilament-L, p27/kip 1, ATBF1, trk-Bの発現とリン酸化)でモニターできる。 このような神経分化系においてまずIL-18発現を検討した。IL-18遺伝子は、2つのプロモーター(P1とP2)をもち、P1からはexon 1からの転写が、P2からはexon 2からの転写がおこる。しかし、exon 1はnon-coding regionであるため、いずれのプロモーターから転写が開始されても発現タンパクは同一で、24kDaの前駆体と18kDaの成熟型となる。免疫担当細胞ではP2の活性化が報告されている。24kDaのIL-18タンパクの発現はレチノイン酸を処理すると1日以内に上昇したが、神経分化が開始する前の処理6日からさらに上昇し、それに並行して18kDaタンパクの発現も上昇した。この神経分化をオカダ酸処理で阻止するとIL-18発現も減少したことから、IL-18の発現は神経分化と並行することが見出された。このIL-18の高値が転写レベルでおこったのか、また転写レベルでおこったのならどのプロモーターを活性化したかを検討するためRT-PCRをおこなったところ、免疫担当細胞とは異なった転写の活性化が示唆される結果が見出された。続いてレチノイン酸処理で神経分化を誘導するとともに、組み換え型IL-18を投与した。しかし免疫系細胞に効果が見られる濃度の倍量で処理した場合も繰り返し投与を行った場合も、神経分化には影響がなく、またapoptosisも誘導しなかった。したがって、未熟児の臍帯血でIL-18が高値であることは、神経の分化阻害やアポトーシス促進には直接作用しないことが示された。
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