今回の検討で以下のことを明らかに出来た。1、子宮内膜ポリープの免疫組織学的検討では、子宮内膜腺ではestrogen receptor(ER)α、ERβ、progesterone receptor(PR)A、PRB共に強く染色されており、子宮内膜の増殖期に一致した。Ki-67指数では、その亢進がみられた。以上の結果より、ERαが増殖亢進の鍵となるリセプターと考えられた。2、K-rasの変異の検索では11例中7例に変異を認め、GAT変異4例、GCT変異2例であり、enrich PCR-ELMAでは一例変異を決定できなかったが、これは、それぞれの検査の感度によるものと推測された。この結果は、これまでの報告と比して高頻度であり、また通常の子宮内膜癌で報告されている変異はGTT変異が多く、タモキシフェンに関連した子宮内膜ポリープのK-ras変異は通常の子宮内の発癌過程で起こる変異と異なる可能性が示唆された。さらに日本の9大学病院と1がんセンターからタモキシフェンに関連した子宮内膜癌を56例収集して解析を行った。タモキシフェン内服中に子宮内膜癌を発症した患者30例とタモキシフェン内服後に子宮内膜癌を発症した患者26例について病理組織学的に解析すると肥満度などの臨床事項は両群で有意差はないが、内服終了後に発症した子宮内膜癌は内服中に発症した子宮内膜癌より有意に多く筋層浸潤、脈管侵襲、リンパ節転移を認めた。患者予後も3年累積生存率で内服中患者が96.4%、内服後患者が74.8%で有意に不良であった(P<0.04)。以上の結果からタモキシフェン内服患者は内服終了後も注意深く経過を観察する必要があると考えられた。この結果は第56回日本産婦人科学会の発表に採用されている。
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