研究概要 |
Vascular endothelial growth factor(VEGF)ファミリーとそのレセプターシステムおよびアンジオポエチン(Ang)とTieシステムが血管新生の代表的な制御因子群として見出された.しかし,婦人科腫瘍において,これら制御因子の相互作用は不明であり,本研究では最も悪性度が高い婦人科腫瘍である子宮癌肉腫についてVEGFファミリーとAngファミリーについて分子レベルで解明し,子宮内膜癌と比較した.子宮癌肉腫35例と子宮内膜癌12例のパラフィン包埋組織片を用いて,VEGF-A,-B,-CとAng-1,-2のmRNAの発現をIn Situ Hybridization(ISH)法で調べた.In VitroでのVEGF蛋白の産生能は,我々が樹立した3系の子宮癌肉腫株(FU-MMT-1,FU-MMT-2,FU-MMT-3)と子宮内膜癌株を用いてELISA法で調べた.さらに,新鮮凍結腫瘍組織内の両ファミリーのmRNA発現をReal-time reverse transcription(RT)-PCR法(ABI7700 System)を用いて,定量的に調べた.子宮癌肉腫は,子宮内膜癌と比較して,VEGF-AとAng-2の発現が高度であった.VEGF蛋白産生能も子宮癌肉腫において有意に高かった.ISH法では,VEGF-Aの発現は癌肉腫の癌腫成分において高度で,近縁の微小血管周囲にAng-2の発現が有意に認められた.Real-time RT-PCR法による定量的評価により,VEGF-A mRNAコピー数と子宮癌肉腫の血管新生能および悪性度との相関が認められた.結論として、子宮癌肉腫の高度な血管新生能は高いVEGF-Aの発現とAng-2の相互作用に起因することが判明し,子宮内膜癌との差異が分子レベルで明らかとなった.
|