研究概要 |
1.本研究では子宮肉腫と子宮癌肉腫におけるVEGFファミリーとアンジオポエチン(Ang)ファミリーの発現を分子レベルで解明し,子宮内膜癌と比較した.子宮癌肉腫は,子宮肉腫や子宮内膜癌と比較してVEGF-AとAng-2のmRNA発現が高度であった.とくに,癌腫成分においてVEGF-Aの発現が高度で,Ang-2の発現は癌腫成分近縁の微小血管に高頻度に認められた.Real-time RT-PCR法による定量的評価により,子宮癌肉腫のVEGF-A mRNAコピー数は子宮肉腫や子宮内膜癌と比較して有意に高かった.VEGF-Aについてはin vitroでも同様の結果であった.従って,子宮癌肉腫の高度な血管新生能が示唆され,この事実はVEGF-Aの高い発現とAng-2の相互作用に起因することが判明し,子宮肉腫や子宮内膜癌との差異が明らかとなった. 2.次に、子宮肉腫株に対する血管新生抑制療法の基礎実験を行った。薬剤は血管新生阻害剤であるTNP-470(fumagillinアナログ)を用いた.まず、我々が樹立した子宮肉腫株FU-MMT-1はマトリックスゲル培地上で血管内皮細胞(HAEC)の管腔形成をもたらし,それはVEGF-2受容体(KDR/Flk-1)tyrosine kinase阻害剤によってブロックされた.また、低濃度のTNP-470においても管腔形成を抑制し,かつFU-MMT-1細胞のVEGFの産生能を抑制した.本研究結果は,今後の子宮肉腫に対する新たな血管新生抑制療法に希望をもたらすと考えられた.
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