卵子形成時には胚発生能が獲得されるが、卵子成熟培養系の向上にはその獲得機構の解明は非常に重要な課題である。既にBDF1雌マウス17日齢由来卵子と24日齢由来卵子を体外成熟させ、体外受精、体外培養を行なうと胚発生能(具体的には胚盤胞形成能)に有意な差があることを見いだしている。そこで、この発生能の差異を利用して、卵子形成時における胚発生能関連遺伝子の検索を行なった。17および24日齢のBDF1雌マウスから得られた体外成熟卵子より得たRNAからcDNAライブラリを作成し、遺伝子発現パターンの違いをSubtraction法(正確にはSuppressive subtracted hybiridization法)により調べた。条件設定に手間取ったため、いまだ多くは検索できていないが、現在までに24日齢由来成熟卵子に特異的に発現する遺伝子のクローンを20個単離し、サンガー法によってDNA配列を決定出来たものは15個であった(現在も配列決定を継続中)。その内、BLAST検索により既知の配列は10個であったが、ほとんどは未同定配列(ESTなど配列は決定されているが遺伝子の性質は未知)であった。ただし、その中で興味深いものとして既に卵子で発現していることが知られているレプチンレセプター遺伝子が17日齢由来卵子よりも24日齢由来卵子で多く発現していることがわかった。胚培養時にレプチンの添加が胚発生を促進する報告もあることから、卵子の発生能獲得とレプチン・レセプターの発現に何らかの関連があることを示唆しており、さらに詳しく調べる予定である。また、次年度はさらに差次的発現遺伝子の検索を行う予定である。
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