研究概要 |
これまでに我々は、バイブレーティングプローブ法とパッチクランプ法により砂ねずみの蝸牛第2,3回転の外らせん溝細胞が陽イオン(Na^+,K^+)吸収機能を持ち、その頂面側にはカルシウム依存性非選択性陽イオンチャネル(以下NSC)が高濃度に局在することを証明した。本研究の目的は外らせん溝細胞における陽イオン吸収制御機構を解明し、NSCが陽イオン吸収に関与するチャネルであることを証明することである。 今年度はバイブレーティングプローブ法により外ラセン溝細胞に向かって生じる内向きの電流が蝸牛内リンパに存在するATP(100μM、1mM)により濃度依存性に活性化されることを解明し、ATPによる陽イオン吸収調節機構の存在を証明した。更にこの電流はATP誘導体である2'-and 3'-O-(4-benzoyl-benzoyl)adenosine 5'-triphosphate α,β-methyleneadenosine 5'-triphosphateによって活性化されたことからATP受容体の一つであるP2X(2)受容体の存在を明らかにした。次年度ではパッチクランプ法を用いて外らせん溝細胞活性剤の頂面側に存在するNSCのATPやATP誘導体に対する影響を測定し、NSCにおけるP2X(2)受容体の局在を証明する予定である。それにより外らせん溝細胞頂面側に存在するNSCが陽イオン吸収機構に関与するチャネルであり、蝸牛内リンパの陽イオン濃度の恒常性維持に寄与するチャネルであると考える。
|