近年アレルギー性鼻炎患者が急増している。本州は山林にスギが多いという植生から、春季のスギ花粉症患者が多いことは勿論、ダニやハウスダストなど通年性アレルギー性鼻炎患者数も極めて多く、かつ発症も低年齢化している。一方、環境中にダイオキシン類などの環境ホルモン(内分泌かく乱物質)が体内に残留し、われわれの健康に影響を与える恐れがあることが指摘されているものの、その関心は発癌性、生殖器系や甲状腺の機能に関するものが多く、アレルギー性鼻炎に及ぼす影響についての研究は極めて少ない。アレルギー反応において中心的な役割を果たしている好酸球及び好中球に及ぼす環境ホルモンの影響を研究することは、この疾患の病態を解明し治療に道を開くものとなると考えられる。また、ダイオキシン等の環境ホルモンの急性毒性に関しては報告されているが、低濃度のダイオキシンに長時間暴露された場合の影響についての検討はなされていない。特に、ダイオキシンの好中球に及ぼす影響についての検討は皆無である。近年、共焦点レーザー顕微鏡を用いることによって、好中球の鼻粘膜への遊走及び局所での活性化の機序について単離細胞レベルで解析することが可能となった。本研究では、好中球が低濃度の環境ホルモンに長時間暴露された場合の好酸球の生存率及び機能について検討することが目的である 低濃度のダイオキシンと好中球を混合培養した後、接着分子の発現を検討したところ、ダイオキシンによってCD11bの発現は上昇し、セレクチンの発現が減少した。これら結果は、ダイオキシンが好中球の接着分子の発現を変化させることによって炎症反応と組織障害を促進し、アレルギー反応を遷延化させる可能性を示唆するものと考えられた。さらに、この接着分子増強における機序について各種阻害剤を用いて検討した。その結果、チロジンキナーゼが関与している可能性が高いことが示唆された。
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