嚥下障害の治療において、新しい嚥下機能回復の手段を構築していく必要性が高まっている。保存的リハビリテーション、外科的介入といった今までの概念に捕われない方法として、人工的に嚥下をコントロールするというアプローチが残されており、この研究では、嚥下機能の中枢処理機構を明らかにすること、ならびに抹消嚥下関連器官の発動シークエンスを明らかにすること、により人工的に嚥下をコントロールする方法を考案・開発し、摂食・嚥下機能障害の治療に役立てるということを目的としている。 本年度嚥下機能のコントロールおよび関連器官のシークエンスについて検討した。Videomanofluorometry(VMF)による嚥下機能測定検査と脳血管障害患者の障害部位との検討を行い、延髄腹側が障害された場合CPGからの出力パターンに著しい障害があらわれ、その結果食道入口部において本来弛緩すべき時点で逆に圧が上昇し開大不良を生じることが明かとなった。次年度は、延髄および脳幹の嚥下中枢への入・出力に対し、核上性および小脳からのレギュレーションについてを明かとすることに目的をおき、中枢レベルにおける嚥下のコントロール機構を検討する予定である。 また、抹消レベルでの知覚反射について明かとすることを目的とし、Videofluorometry(VF)下に誤嚥と血中酸素飽和度の関係を検討中である。現在までのところ、誤嚥を生じた場合血中酸素飽和度は低下するというものと関連性はないとの両方の報告がみられているが、血中酸素飽和度がいくら低下し場合を有意とするか標準化されていないという問題に加え、低下した値よりは絶対値をもとに標準化するほうが有用性が高い可能性があり、現在これらの問題について検討中である。
|