研究課題/領域番号 |
14571616
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研究機関 | 滋賀医科大学 |
研究代表者 |
櫻井 弘徳 滋賀医科大学, 医学部, 助手 (60303765)
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研究分担者 |
鈴木 幹男 滋賀医科大学, 医学部, 講師 (00226557)
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キーワード | 内リンパ嚢 / 内耳 / 内リンパ水腫 / メニエル病 / 帯状疱疹ウィルス / EBウィルス / PCR / In Situ Hybridization |
研究概要 |
ヒト内リンパ嚢は、内耳発生の観点から見ると蝸牛や半規管発生よりも非常に早期に出現する部位である。また内リンパ嚢は、内耳の一部でありながら他の内耳と異なる様々な点を下記のように挙げることができる。 (1)他の内耳が骨迷路に硬く囲まれているのに内リンパ嚢は後頭蓋窩に突出した器官である。 (2)内耳血管は無窓性であるが内リンパ嚢の血管は有窓性である(Lundquist 1976)。 (3)他の内耳では観察されない免疫担当細胞が内リンパ嚢では観察される(Rask-Andersen 1980)。 (4)他の内耳は胎生期20週頃にほぼ完成するが、内リンパ嚢は生後3才頃まで発育を続ける(Sando 1982)。 これらの特徴を考えると内リンパ嚢は内耳の中でも外界の刺激、例えばウィルス感染等を受けやすい器官であることが推測される。さらに我々の報告してきた臨床所見として以下の所見も認められる。 (5)メニエル病の内リンパ嚢は光顕・電顕的観察で線維化が強い(Yazawa 1981)。 (6)メニエル病の内リンパ嚢周囲の骨組織の発育障害がCT上で観察される(Yazawa 1994)。 (7)メニエル病の内リンパ嚢の発育障害が手術所見として認められる(Yazawa 1998)。 これらの背景を考察すると、内リンパ嚢はその成長期である3才以前の幼児期に何らかのウィルス感染などによる炎症を起こし、光顕・電顕的所見、手術所見やCT所見で観察されるような内リンパ嚢の発育障害や内リンパ嚢周囲の骨組織の発育障害をきたすと考えられる。機能的には、これらの結果として内リンパ嚢の潜在的機能障害、すなわち内リンパ液の吸収障害の傾向をきたし、メニエル病発祥の基盤をこの時期に形成してしまっている可能性が考えられる。多くの研究者はこれらの所見のうち(7)のようなCT所見は、先天性、また時には遺伝性であると唱えているが、このプロセスは後天性のものであるというのが我々の独自の考えである。 現在までにヒトメニエル病の内リンパ嚢標本10例とヒト剖検例の内リンパ嚢7例についてウィルス検索をPCR法とIn Situ Hybridization法を用いて行った。単純ヘルペスウィルスとサイトメガロウィルスに有意所見は認めなかったが、帯状疱疹ウィルスとEBウィルスについて陽性所見を認め、統計学的にはメニエル病の内リンパ嚢で有意に帯状疱疹ウィルスが陽性であることが判明し、EBウィルスについては傾向があることが判明した。
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