研究概要 |
当科受診の咽喉頭異常感症患者10名、喉頭肉芽腫症患者3名について、胃食道逆流症に関する問診を行った後、喉頭所見を観察するとともに患者の咳感受性を測定した。咳誘発物質であるカプサイシンを0.49,0.98,1.95,3.9,7.8,15.6,31.2,62.5,125そして250μmol/lの濃度の溶液として用意し、薄いものから順に吸入させた。咳嗽が5回認められた濃度を咳閾値と判定し、吸入器にはアストグラフを用いた。 咽喉頭異常感症患者におけるカプサイシン咳感受性は6.8であった。健常者の咳閾値は7.8〜31.2μmol/lとされており、われわれの施設では平均11.2であったので、咽喉頭異常感症患者ごく軽度のカプサイシン咳感受性の亢進があることが推定できたが、統計学的に有意差が得られるところまでにはいたらなかった。これら咽喉頭異常感症患者に対してPPIを2週間投与し、異常感、咳嗽に対する効果をみたところ、咽喉頭異常感症患者10名中6名で異常感の軽減が、咳嗽が4名中2名で改善した。投与前のカプサイシン咳感受性平均は6.8であったが、投与2週間後のカプサイシン咳感受性は8.5とわずかに低下していた。咽喉頭異常感の改善した6名中4名に咳感受性の低下を認めたが、2名では変化がなかった。また咽喉頭異常感に変化のなかった4名のうち2名に咳感受性の1段階低下を認めた。喉頭肉芽腫症患者3名ではPPIを3ヶ月投与し、全員で肉芽腫の縮小を見た。肉芽腫患者1名に消化管24時間pH測定を行ったところ下咽頭においてpHが4以下の逆流時間は2分、pHが5以下の逆流時間は38分であった。カプサイシン咳感受性は投与前3.9から投与後7.8に低下していた。PPI投与後のpH測定の協力は得られなかった。今後、咽喉頭異常感症、喉頭肉芽腫症とも症例を増やして更なる解明を進めたい。
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