上気道の副鼻腔および中耳腔における難治性好酸球性炎症の病態解明を目的に、ヒトの副鼻腔粘膜および中耳粘膜を用いて、局所好酸球浸潤に関与するサイトカイン・ケモカインのメッセージの発現を半定量し、病態との関係を検討した。 副鼻腔内視鏡手術を施行した17症例の副鼻腔粘膜からRNAを抽出し、IL-5、GM-CSF、Eotaxin、IL-8の初期量をBAS2000を用いて測定した。再発群と非再発群に分けて検討を行った。17例中9例に再発がみられた(再発群)。このうち6例では副鼻腔粘膜における炎症細胞浸潤は好酸球優位であった。一方、非再発群8例では、2例にのみ好酸球優位症例があった。このうち1例は喘息合併例である。両者において顆粒球に占める好酸球の割合を比較すると、再発群で好酸球浸潤の割合が有意に高いことがわかった。 次に、各サイトカインの発現率を検討すると、IL-5は全例で発現しており、以下IL-8(88%)、Eotaxin(53%)、GM-CSF(24%)の順で発現していた。両群間で発現率に大きな差は認めなかった。また、局所好酸球浸潤の割合とIL-5初期発現量とは、再発または非再発に関係なく正の相関を示した。一方、Eotaxinの初期発現量と好酸球浸潤の程度との有意な相関は認めなかった。しかしながら、再発群においてはEotaxinの初期発現量と好酸球浸潤の割合との間に有意な相関がみられた。また、IL-5とEotaxinのメッセージの発現も相関しており、特に再発群ではEotaxinとIL-5の発現に相関傾向がみられた。一方、IL-8の発現と好酸球浸潤の割合との相関はみられなかった。以上より、IL-5とEotaxinの共発現が好酸球浸潤の強さや難治化に一部関与している可能性が示唆された。
|