上気道の副鼻腔および中耳腔における難治性好酸球性炎症の病態解明を目的に、ヒトの副鼻腔粘膜および中耳粘膜を用いて、局所好酸球浸潤に関与するサイトカイン・ケモカインのメッセージの発現を半定量した。副鼻腔内視鏡手術を施行した17症例の副鼻腔粘膜からRNAを抽出し、IL-5、GM-CSF、Eotaxin、IL-8の初期量をBAS2000を用いて測定し、再発群と非再発群に分けて検討した。再発群では好酸球浸潤の割合が有意に高く、各サイトカインの発現率(%)は、IL-5(100%)、IL-8(88%)、Eotaxin(53%)、GM-CSF(24%)であった。両群間で発現率に大きな差は認めなかった。また、局所好酸球浸潤の割合とIL-5初期発現量とは、再発または非再発に関係なく正の相関を示した。一方、EotaxinおよびIL-8の初期発現量と好酸球浸潤の程度との有意な相関は認めなかった。しかしながら、再発群においてはEotaxinの初期発現量と好酸球浸潤の割合との間に有意な相関がみられた。また、IL-5とEotaxinのメッセージの発現も相関しており、特に再発群ではEotaxinとIL-5の発現に相関傾向がみられた。以上より、IL-5とEotaxinの共発現が好酸球浸潤の強さや難治化に一部関与している可能性が示唆された。また、好酸球性副鼻腔炎に対するロイコトリエン拮抗剤の効果を検討した。保存的治療に抵抗性を示すいわゆる難治性好酸球性副鼻腔炎症例34例を対象に、ロイコトリエン拮抗剤(プランルカスト)を2ヶ月間投与し、症状・所見のスコアの変化を投与前後で比較した。自覚症状では、鼻汁、後鼻漏、鼻汁のかみやすさにおいて有意なスコアの減少を認めたが、鼻閉、嗅覚障害においてはスコアの減少は明らかではなかった。一方、他覚所見では、鼻汁量、鼻汁の性状、鼻粘膜の腫脹において有意にスコアが減少した。以上の結果より、ロイコトリエンが好酸球性副鼻腔炎の病態に一部関与している可能性が示唆された。
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