研究概要 |
<はじめに>掌蹠膿疱症(PPP)の発症機序として、扁桃においてリンパ球が熱ショック蛋白(Heat shock protein : HSP)により感作され、その結果産生された抗RSP抗体や感作リンパ球が掌蹠に膿疱を発症させる自己免疫疾患ではないかと考えた。 <方法>1.PPP患者から同意を得た上で採取した末梢血、足底の正常部位の皮膚、摘出扁桃を用い、SCIDマウスに移植した。SCIDマウス内での扁桃リンパ球からHSPに対する抗体が産生されるかELISA法にて検討した。用いた抗体は細菌性HSP65であるGroEL,細菌性ESP70であるDnaK、細菌性であるHSP60である。2.移植した皮膚に浸潤したリンパ球について抗CD4抗体,抗CD8抗体による免疫組織学的検討を行った。3.HSP60 recombinantをSCIDマウス背部に皮下注射し、SCIDマウスに移植した扁桃リンパ球からの抗体産生を検討した。 <結果>1.PPP患者扁桃リンパ球を移植したSCIDマウス血清中の抗DnaK抗体、抗GroEL抗体、抗HSP60IgG抗体は高い陽性値を認めた。2.移植皮膚へ浸潤した細胞はCD4陽性Tリンパ球とCD8陽性Tリンパ球を高い割合で認めた。3.PPP患者扁桃リンパ球を移植したSCIDマウス血清中では、HSP60 recombinantに対して、高値の抗HSP60IgG抗体を認めた。 <考察>PPP患者扁桃リンパ球はヒト足底皮膚に対する産生を認め、上皮にはTリンパ球が浸潤したことから、PPP患者扁桃ではすでに上皮に存在するHSPに対して液性免疫、細胞性免疫の両面で感作されていることが認められた。上皮内のHSPがPPPの発症機序の1つであると考えられ、HSPは扁桃の病巣性診断検査の一助となることが考えられた。
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