マウス嗅上皮におけるアポトーシスの検討、特にステロイドの影響について検討した。嗅覚障害におけるステロイド投与は一般的に行われる治療方法であるが、嗅上皮におけるステロイドの影響を組織学的に調べた報告は少ない。我々はマウス嗅上皮のタネル陽性細胞について、ステロイド投与群と非投与群とを比較検討した。30g成熟雄マウス5匹にトリアムシノロン(ケナコルトA)40mg/bodyを1回腹腔内投与し、1週後に4%パラホルムアルデヒドにて経心的に灌流固定を施行、10%EDTAにて脱灰し、その後断頭、パラフイン包埋、4μmの切片を作成した。コントロール群として、未投与の30g成熟マウス5匹を同様にして固定、切片を作製した。作成した切片をタネル法で染色し、2群間のタネル陽性細胞を比較、検討した。タネル陽性細胞は、ステロイド非投与群の嗅上皮にはほとんどみられなかったが、ステロイド投与群においては嗅上皮基底層付近に認められた。ステロイドの投与でアポトーシスは増加するといわれているが、嗅上皮における検討はなされていなかった。今回ステロイド投与マウスの嗅上皮においてタネル陽性細胞がみられたことより、ステロイド投与で嗅上皮においてもアポトーシスが増加している可能性があると考えられる。今後、アポトーシス阻害薬をあわせて投与し、ステロイド誘発アポトーシスの抑制についても検討していきたい。
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