顔面神経麻痺の評価法としては、我が国では40点評価法が、国際的にはHouse-Brackmann法が広く利用されている。しかしこれらの視診による評価法には、客観性や再現性の面で問題がある。これらの視診による評価法の問題点を補うためにマーカー法、subtraction法、オプティカルフローを利用した方法など、いくつかの評価法が提案されている。本研究では、我々が数年前から進めてきた輪郭抽出法を更に一歩推し進め、顔面表情筋の走行に沿って顔面領域を分割し、個々の領域の注目点の動きを追跡する方法を開発した。従来の輪郭抽出法では、顔面の最大運動時の口唇と眼瞼の輪郭をコンピュータを用いて決定し、その左右非対称性をさまざまなパラメーターを用いて定量的に評価するという方法を用いた。本研究では、口唇と眼瞼の輪郭情報を利用して顔面表情筋の走行に従って顔面を複数の領域に分割し、その各領域の参照ポイントの動きを追跡することによって顔面神経麻痺の定量的評価を行った。解析した顔面運動は、口笛運動、弱閉眼運動、イーと歯を見せる運動、額の皺寄せ運動の4つであった。またこれらの個々の顔面運動の評価結果を元に異常共同運動も加味した総合評価指数による評価も行った。その結果、本解析法は、40点評価法の問題点のひとつである2点の顔面運動の詳細な定量的評価が可能であることが明らかとなった。解析ソフトウェアはまだ半自動的な解析ができる段階にとどまっており、今後、改良をすすめていきたい。
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