実際の補聴器に組み込むことが可能なディジタル処理による音声加工によって、感音性難聴の語音異聴を改善する方法を明確にすることを目的に研究を実施した。音声加工の方法は、ワークステーションによる高度の音声加工ソフトウェアを使用して行ない、子音および母音の周波数スペクトラムに影響を与えない方法で、2音節語音の第1音に音声加工を行った。具体的には、子音部分の時間を伸長する方法(子音伸長)と、子音部分を母音部分に対して増幅する圧縮増幅を行った。無加工の原音、子音伸長を行った語音、子音伸長と圧縮増幅を同時に行った伸長圧縮の3種類の語音を用いて明瞭度検査テープを作成し聴力正常者及び感音性難聴者で語音明瞭度検査を行った。 実験結果は、正常聴力者においては、伸長圧縮では有声子音の多くで明瞭度を改善させる効果があった。子音伸長にも有声子音では同様の結果を認めたが、無声子音では逆に明瞭度を悪化させる傾向を認めた。 以上の結果をふまえ、圧縮単独と伸長圧縮の効果を比較した。圧縮単独の明瞭度改善の効果は少なく、伸長と圧縮を同時に加えることが明瞭度改善に有効であった。
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