補聴器に利用可能なデジタル音声加工として、子音伸長、圧縮増幅および圧縮増幅と子音伸張の併用について、感音性難聴患者の会話理解における有効性を検討した。単語の第一音において、閾値上20dBおよび閾値上30dBで圧縮増幅および子音伸張が有効で、両者を併せた伸張増幅はより明瞭度改善に有効であった。ただし、十分に大きいレベルで会話を聴取できる場合は、音声加工の効果は認めなかった。多人数で会話している場合に、比較的声が小さい話者の話を聞く場合に圧縮増幅や子音伸長によって明瞭度が改善すると考えられた。明瞭度改善の効果を個別の子音で検討すると、/d/、/dz/、/t/、/k/、/g/の各音素で統計的に有意な改善を認めた。日本語会話における上記の子音の出現頻度は、28.9%に達する。今回の研究で検討したデジタル音声加工は明瞭度改善に有効である。
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