対象と方法 1)疲労が空間識に及ぼす影響を知るために、健康被験者10名(男性6名、女性4名、平均21.4歳)に徹夜負荷を与え、翌朝にクレペリン試験と静止・回転中の重心動揺記録を実施した。睡眠充足日の結果と比較した。2)夜勤が疲労度とストレスマーカーに及ぼす影響を、健康な看護士17名(男性1名、女性16名)を対象に調べた。 結果 1)静止3分間の総軌跡長は睡眠充足日193.6±18.1cm、睡眠制限日218.3±20.0cm、外周面積は4.71±0.91cm^2と6.60±1.18cm^2で有意差はなかった。回転中は総軌跡長632.7±69.0cmと678.4±106.5cm、外周面積24.82±4.71cm^2と36.35±10.81cm^2で、同様に有意差は見られなかった。クレペリン検査は、睡眠充足日の総正解数10020、エラー総数60、睡眠制限日の総正解数10837、エラー総数51で有意差を示さなかった。2)夜勤明けと休日明けの午前中のストレスマーカー(ADH、コルチゾール、フィブリノーゲン)を比較した。疲労度は夜勤明けで明らかに増大したが、ストレスマーカーで有意の上昇を示したものはなかった。夜勤のストレスは個体差や勤務年数などの影響が大きいために、一定傾向が出なかった、と解釈された。 考察と結論 夜勤労働や睡眠制限は疲労の大きな要因であり、めまい患者の生活背景として見られる。今回は、徹夜と夜勤が身体動揺やストレスマーカーに与える影響を調べた。しかし予想に反して、クレペリン検査、身体動揺、ストレスマーカーいずれにおいても、有意の変化は得られなかった。現時点では、睡眠制限や夜勤は疲労度を増大させるものの、今回の負荷程度では脳機能の低下やストレスの増大をもたらすとは言えない、と結論された。
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