研究概要 |
1.直線加速度の検出器である耳石器(球形嚢と卵形嚢)と回転加速度の検出器である垂直半規管の一つである前半規管神経の単一前庭神経核ニューロンへの収束の様式を調べると、約1/3の前庭神経核ニューロンが耳石器と半規管の入力を受け、その多くは上部頚髄へ軸索を伸ばしていた。収束のある前庭神経核ニューロンの多くは動眼神経核へは軸索を派生していない。このことは直線と回転加速度の統合が最終共通路以前でなされていることの生理学的意味付けを今後の研究対象にしたい(Zhang et al.2002)。 2.卵形嚢系で交連性抑制が直線加速度感受性メカニズムとして重要であることを明らかにした(Uchino et al.2001)。この交連性抑制の関わる前提庭神経は下核と外側核に多く存在し、対側の前庭神経核へ軸索を派生する(Bai et al.2002)。このニューロンは半規管系の入力も受け、三半規管に見られる交連性抑制機構と共通のニューロンが機能していることが明らかとなった(Bai et al.2002,Kasahara & Uchino 1974)。 3.平衡感覚のうち直線加速度の感覚は回転感覚と異なり同側の視床を介して大脳皮質へ情報を送ることを明らかとした(Meng et al.2002)。 4.卵形嚢を電気刺激すると外転神経と内直筋運動神経にシナプス結合している。この神経結合から予想される眼球運動は刺激側への水平性眼球運動であるが、この存在を明かにした(Goto et al.2003)。
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