アレルギー鼻粘膜のExplant Cultureを行い、アレルギー性鼻炎の病態について検討した。研究に対するインフォームドコンセントで了承を得たアレルギー性鼻炎に対する下鼻甲介手術を行なった患者の切除粘膜の切除面をフィブリン糊で培養皿に固定し、Explant Cultureとし抗原誘発を行なった。この抗原誘発で即時相では好塩基性細胞の遊走が多く認められ、遅発相では好酸球の遊走が多く認められた。この好酸球の遊走が神経ペプチドであるサブスタンスP(SP)に関与しているかどうかを同じくExplant Cultureで検討した。培養液にはSPの分解を促進する酵素の阻害薬を入れ、内因性のSPの活性が高まるようにした。酵素阻害薬はニュートラルエンドペプチデース(NEP)に対し、フォスフォラミドンをアンギオテンシン変換酵素に対してはカプトプリルを、アミノペプチデースに対してはリウペプチン、ピューロマイシンを他の酵素群に対してはアプロチニンを入れ、酵素活性を阻害した。この結果、阻害薬なしでは自然遊離の116.3%の好酸球が遅発相で遊走したのと比較し、阻害薬を投与した場合には158.6%の好酸球が遅発相で遊走し、好酸球遊走に関しペプチド分解酵素が抑制の役割をしていることが考えられた。またこの酵素阻害薬の存在かに、SPを培養液に10-6Mから10-4Mの濃度で添加すると181.7%から254.3%まで濃度依存的に遅発相における好酸球浸潤が増加した。この結果は遅発相における好酸球浸潤に対し神経ペプチドであるSPの関与があることが示され、この細胞浸潤は鼻粘膜中の神経ペプチド分解酵素により抑制されていることが判明した。
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