研究概要 |
本年度の研究目的は、COCH遺伝子発現の発生過程の時期特異性の検討である。 ヒトは胎生20〜25週で内耳はほぼ成人と同様の形態となるが、マウスやラットの内耳は出生直後まだ未成熟であり、生後10〜14日頃に完成することが知られている。今回はすべての抗Cochlinアイソフォーム特異的抗体の中でも、p63,44,40の全てのアイソフォームを認識する抗体(anti-vWF-A1 antibody, antigenic peptide;19-mer(KADIAFLIDGSFNIGQRRF)residues 163-181 in the vWF-A1 domain of Cochlin)を用い、ラットの蝸牛におけるCOCH蛋白の発現を生後3日目から成獣まで比較する免疫組織学的研究を行なった。 使用動物;ウィスターラット、それぞれ生後3日目、6日目、10日目、24日目および成獣のラットを使用した。 方法;固定は4%パラフォルムアルデヒドで(一晩)し、10%EDTAで脱灰処理を行なった(3〜5日)。パラフィン包埋したブロックを作成、2μmの薄切切片を作成した。anti-vWF-A1 antibodyを1次抗体としてABC法(DABによる発色)で免疫染色を行なった。 結果;染色は主にラセン板縁およびラセン靭帯に認められた。コルチは弱く、ラセン神経節、血管条は染色されなかった。またラセン板縁は成長を通じ、染色の強さはあまり変わらなかったが、ラセン靭帯は24日以降の内耳で強く染まるようになった。また基底回転ほど濃く染色された。ラセン板縁、ラセン靭帯が染色されるという結果は従来の報告にあるDFNA9患者の側頭骨病理での変性部位と同様であり、やはりDFNA9の発症においてラセン板縁、ラセン靭帯が重要な箇所であると考えられた。 今後COCH遺伝子の発現特異性を担うプロモーター領域の解析を行う。
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