平成14年度研究成果:実験動物としてモルモットを使用した。中枢側の聴神経の神経活動として、第一次聴皮質野、第二次聴皮質野、蝸牛神経から神経発火数を測定した。モルモットの頭右頭側葉上をドリルにて開頭し、大脳皮質野を露出してから神経発火を記録、測定した。蝸牛神経の場合は、後頭部を開頭し、小脳を除去すると蝸牛神経が現れ、そこから神経発火を測定した。聴神経から神経発火を記録するためにTDT workstationを用いて測定した。聴覚皮質の神経発火を測定する実験は最近になって行われるようになったが、モルモットを使用した研究は少なく1999年、Wallaceらが報告しているのみであり、今回我々もTDT workstationを用いることで測定能とが可なった。 平成15年度研究成果:モルモットに大量の塩酸アミカシンを投与して腎障害、及び蝸牛障害モデルを作成した。塩酸アミカシン750mg/kgを連日10日、筋肉注射して、投与1ヶ月後に聴神経から神経活動を測定した。結果は蝸牛神経の神経発火は異常を来たし、第一次聴皮質野の自発放電数は不変あるいはやや減少し、第二次聴覚皮質野では増加する傾向を示した。この結果は以前我々が報告したサリチル酸、キニン投与による耳鳴発現時の変化と類似する結果となった。腎障害によってmedium sized catabolic toxic moleculesからなる毒性代謝産物が蝸牛内の浸透圧、イオン組成の変化を来たしhomeostasisの障害を来たし、耳鳴を引き起こしたためと推定された。耳鳴発生のメカニズムとして聴皮質の第2次聴覚野が重要な役割をしていることが判明した。しかし、固体により反応のばらつき、アーチファクトの問題などがあるため、今後さらに増やして検討を加えていく。
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