頭頚部扁平上皮癌組織を用いて、シクロシキゲナーゼ(COX)-2をはじめとしたCOX代謝について検討した。手術的に摘出した頭頚部扁平上皮癌組織(25例)を対象に、免疫組織学的にプロスタグランジン(PG)合成酵素について検討した。検討した酵素はCOX-1、COX-2、H-PGD合成酵素、L-PGD合成酵素、mPGE合成酵素である。それぞれの特異的抗体を用い、peroxidaseを反応させたあと、DABで発色させた。その後、ヘマトキシリンにて核染色を施行した。 COX-1は正常粘膜と癌細胞の両方に発現していた。一方COX-2は癌細胞のほかに血管内皮細胞や筋線維、血管平滑筋にも発現がみられた。H-PGDSは癌細胞、筋線維や炎症性細胞(好中球、マクロファージ)に発現がみられた。しかし炎症性細胞への発現は、コントロールとして検討した炎症組織と比較すると染色性は低かった。L-PGDSの発現はほとんど認められなかった。mPGESは癌細胞に強く発現していたが、癌間質の細胞には発現が認められなかった。正常粘膜にも発現がみられ、血管内皮細胞、炎症性細胞にも発現が認められた。 扁平上皮癌を原発別にみたが、大きな特徴は認められなかった。分化度の違いでは、高分化なものほどmPGESの発現が強い傾向が認められた。リンパ節転移との関係について現在検討中である。PG合成酵素のうち、COX-2、mPGES、H-PGDSが転移・浸潤と関わっている可能性があり、さらに検討を重ねていく予定である。アプローチ法として今後RT-PCRを用いてmRNAレベルで、およびウエスタンブロット法でタンパクレベルの検討を行なう予定である。
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