喉頭癌患者27症例を対象とした。サンプルは他の治療、すなわち化学療法や放射線療法を施行していない、生検あるいは手術で得られた組織とした。対象としてdysplasiaの組織を用いた。シクロキシゲナーゼ(COX)系の酵素をターゲットに検討を行った。すなわち、COX系の律速酵素であるCOX-1およびCOX-2、さらにその下流の酵素であるプロスタグランジンE合成酵素(microsomalPGES;mPGES)、プロスタグランジンD合成酵素(PGDS)について免疫組織学的に検討した。Dysplasia組織では、COX-2の発現が、ほとんどみられなかったのに対して、癌組織では約70%の症例で強い発現が認められた。COX-2の発現は核周囲の細胞質にとくに強くみられた。それに対してCOX-1は、びまん性に染色され特異的な像は認められなかった。COXの下流の酵素であるmPGESは、COX-2と同様に癌細胞の核周囲の細胞質に強い発現が認められた。一方、PGDSにも染色されたが、mPGESほど強くなくしかも癌細胞に特異的に発現していなかった。以上から喉頭癌細胞のCOX系代謝を考えると、アラキドン酸からCOX-2の触媒によってPGH2に代謝され、さらにmPGESの働きによりPGE2が産生される経路が重要であると考えられた。COX-2阻害薬によるchemopreventionがこれまで多数報告されているが、より下流でのchemopreventionの可能性が示唆された。組織学的分化度とCOX-2の関係をみたとき、高分化なものほどCOX-2の発現が強くみられた。しかし、リンパ節転移、ステージ分類と、COX-2あるいはmPGESとの関係については有意な差を認めなかった。
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