頭頚部扁平上皮癌組織を用いて、シクロオキシゲナーゼ(COX)系代謝について検討した。すなわち、構成酵素であるCOX-1、誘導酵素であるCOX-2およびその下流酵素であるプロスタグランジン(PG)合成酵素(H-PGD合成酵素、L-PGD合成酵素、mPGE合成酵素)について検討した。対象は手術的に摘出した喉頭癌組織(27例)および正常組織あるいはDysplasia組織を対象に、免疫組織学的に検討した、それぞれの特異的抗体を用い、peroxidaseを反応させたあと、DABで発色させた。その後、ヘマトキシリンにて核染色を施行した。 COX-1は正常粘膜と癌細胞の両方に発現していたが、癌組織に特異的な所見は認められなかった。一方COX-2は正常細胞にはほとんど発現せず、癌細胞に強く発現した。H-PGDSは癌細胞、筋線維や炎症性細胞(好中球、マクロファージ)に発現がみられたが、炎症性細胞への発現は、コントロールとして検討した炎症組織と比較すると染色性は低かった。L-PGDSの発現はほとんど認められなかった。mPGESはCOX-2と同様に癌細胞に強く発現していた。COX-2、mPGESはともに癌細胞、特に核周囲の細胞質に強く発現し、その連関が示唆された。これまで癌組織の主な産生PGがPGE2である事実からも、COX-2-mPGE-PGE2の連関が重要であると考えられた。組織学的分化度の違いの検討から、COX-2は高分化癌ほど強い発現がみられた。またリンパ節転移に有無の検討では、転移がないほうがCOX-2が強く発現する傾向がみられた。腫瘍の大きさ(T分類)とCOX-2およびmPGESとの有意な関係はなかった。 COX-2-PGES-PGE2系は癌細胞の分化誘導に関与している可能性が示唆された。大腸癌ではすでにNSAIDsのchemopreventionが証明されているが頭頸部癌においてもその可能性が示唆された。
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