研究概要 |
骨髄幹細胞を含む骨髄細胞の移植(骨髄移植)を用いて、以下のことを行った。 1.螺旋神経節細胞の早期萎縮により早期老人性難聴が生じるSAMP1マウスにおいて、このマウスの骨髄を正常マウスに移植するとこの正常マウスに早期老人性難聴が起こり、正常マウスの骨髄をこのマウスに移植すると難聴が起こらないことを証明した。蝸牛局所を見ると、ドナーの抗原を表出する細胞は認められず、したがって、(1)この難聴の原因は蝸牛細胞にあるのではなく骨髄・免疫担当細胞側にあると考えられた。(2)難聴発症機序として、ドナー細胞(骨髄(幹)細胞)が蝸牛に直接到達して螺旋神経節細胞のアポトーシスや維持・再生に関わるのではなく、ドナーの骨髄幹細胞から再構築された全身免疫機構の液性因子が内耳血液関門を通して蝸牛に関与することが示唆された(Inaba, Iwai, et al.International Conference Series,2件投稿中,2件発表予定(世界耳鼻咽喉科Rome,2005))。 2.自己免疫性感音難聴のモデルマウスであるMRL/lprマウスの骨髄細胞を、聴力正常マウスに移植すると、MRL/lprマウスと同様の蝸牛病変および難聴が生じること、逆に、正常マウスの骨髄細胞をこのマウスに移植すると、生じるはずの難聴が予防され、また、一旦発症した難聴が回復することを証明した。したがって、自己免疫性感音難聴の原因が蝸牛側にあるのではなく骨髄側にあり、正常ドナーからの骨髄細胞を用いた移植が蝸牛障害治療に用いられることが判明した(Acta Otolaryngology,1件投稿中)。 3.骨髄移植の接種法において、静注接種でなく骨髄内接種(骨髄内骨髄移植)を行えば、より早期に、かつ、無処置に近い全身免疫機構に再構築できることを証明した(Baba, Inaba, Iwai, et al.Immunobiol)。
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