研究課題
基盤研究(C)
加齢とともに急速な感音難聴と蝸牛組織の萎縮を伴う難聴モデルマウス2種(MRL/1pとSAMP1)を用いて、蝸牛細胞維持・再生機能と骨髄免疫系機能との関連性を検討した。対比する正常マウスとして、BALB/cやC57BL/6、また、C57BL/6に緑色蛍光を発する蛋白(green fluorescence protein;GFP)のDNAが導入されたトランスジェニックマウスであるGFPを用いた。骨髄移植法として、一般的な経静脈的骨髄細胞接種を行ったが、骨髄内骨髄移植法が移植後の免疫機能を移植前の機能と同程度にまで回復させうることを明らかにできたので、この方法も用いた。1.いずれの難聴モデルマウスにおいても、難聴や蝸牛細胞萎縮の原因は蝸牛側にあるのではなく、骨髄(幹)細胞から分化した免疫担当細胞側にあると考えられた。すなわち、これらのマウスに正常マウスの骨髄を移植すると、本来発症すべき難聴とこれに伴う血管条萎縮(MRL/1pr)、あるいは螺旋神経節萎縮(SAMP1)は、予防・治療された。また、正常マウスにこれらのマウスの骨髄(幹)細胞を移植すると、正常マウスに同様の難聴と蝸牛病変が生じた。したがって、骨髄移植が難聴の治療として有効であると考えられる。2.難聴モデルにおける蝸牛細胞萎縮の発現消失機序を検討したところ、移植された骨髄幹細胞が蝸牛局所に至ってこの部の再生を司るのでなく、骨髄幹細胞から分化した免疫担当細胞の分泌した液性因子が、内耳血液関門を通して蝸牛細胞の維持に関与することが明らかとなった。加齢に伴いTh cell機能障害が認められ、さらに、難聴モデルマウスの免疫力を低下させると、難聴の進行する現象が認められた。以上より、全身免疫機構、特にTh cellが液性因子を介して蝸牛機構に作用していることが明らかとなった。液性因子の同定やこの因子の投与、Th cell機能の活性化が、蝸牛細胞維持、聴覚維持に有効であり、難聴の予防法・治療法に結びつくものと考えられる。
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