【目的】腫瘍壊死因子であるTNF-αは、多くの細胞種において耐性を示す事が報告されている。TNF-αはFasなどと共にアポトーシスシグナルを活性化するが、それと同時に生存シグナルも活性化され、これが耐性の原因と考えられている。この生存シグナルとしてNF-κBが報告されているが、詳細は不明である。今回、このTNF-αに耐性を示す悪性黒色種細胞株BL-6において、PKCを阻害する事でこのTNF-αの耐性を克服する事を見出すとともに、その耐性機序の解明を試みた。 【方法】B16melanomaBL-6細胞を使用し、PKC、Akt、MEK及びP-38を阻害後、TNF-αによる細胞死をWST-8法により測定した。また、H7によりPKC阻害後のNF-κB、MEK及びJNKの活性をウエスタンブロット法により検出した。 【結果および考察】BL6細胞にTNFαを添加しても、その増殖に全く影響を及ぼさなかった。しかし、PKC阻害剤であるH7処理後TNF-αを作用させた結果、ほとんどの細胞において細胞死を誘導した。この時、生存シグナルであるNF-κBは活性化していた。そこでNF-κB以外の生存に関わるシグナルを検討した結果Akt、ERKの減少が認められ、特にERKのリン酸化の減少が著しい結果を示した。そこで、Akt阻害剤であるLY、MEK阻害剤であるU0126で処理後、それぞれにTNF-αを投与すると、細胞死を誘導し、これらのシグナル阻害剤が有用な抗がん剤として利用可能であることが示された。また、この時、NF-κBについてはPKC阻害に伴うタンパク発現に大きな変化が認められなかった。このことからBL-6細胞のTNF-αに対する耐性は、Aktの生存シグナル、と特にPKC、Raf及びMEKを介した生存シグナルが重要である事が認められた。
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