最近、JunタンパクのN端のリン酸化や、NFkBの核内への移動がアポトーシスに関与していることが報告されるようになってきた。 c-Junタンパクのアミノ酸配列の63番目と73番目のアミノ酸をSerから別のアミノ酸に変えたc-Jun(AA)ノックインマウスと正常マウスの2系統を用いて、両方とも視神経を眼球の後ろで切断し、アポトーシスがおこるかどうか、c-Junのリン酸化やNFkBの核内への移動がおこるかを検索した。 正常マウスでもノックインマウスでも視神経切断7日後にc-Junに対する抗体で免疫染色すると、神経節細胞に陽性反応が見られた。同じc-Junの中でリン酸化されたものにだけ反応する抗体で染色すると、正常マウスでは7日後に陽性像がみられたが、ノックインマウスでは全くみられなかった。どちらのマウスでもNFkBの核内への移動は見られなかった。 さらに、アポトーシスを特異的に示すTUNEL染色を行うと、正常マウスの7日後では陽性細胞数が非常に増えていたが、ノックインマウスではTUNEL陽性細胞の数は正常マウスの25%に減少していた。 さらに視神経切断2週間後の神経節細胞の数はノックインマウスの方が正常マウスよりも多かった。 このことはc-Junというタンパク質がリン酸化されると、網膜の神経節細胞がアポトーシスに向かうということを示唆している。さらに光照射に伴う網膜障害が網膜ミューラー細胞とミクログリアの相互作用により制御されていることも明らかとなった。
|