研究概要 |
本研究では糖尿病網膜症の発症、進展を防ぐ治療薬の開発を目ざすことである。戦略としては糖尿病網膜症の病態として酸化ストレスによる細胞障害、アポトーシスを検討した。手術時に患者の同意を得たうえで硝子体サンプルを採取して細胞障害の指標となる8-ヒドロキシデオキシグアノシン(8-OHdG)、酸化ストレス(NOx)、細胞障害をきたすサイトカインとしてVEGF, IL-6を測定したところ、糖尿病網膜症では8-OHdG, NOx, VEGF, IL-6はともに対象となる疾患に比較して上昇していた。また、網膜障害と関連しているVEGFの作用を中和する可溶性受容体の発現は糖尿病、非糖尿病状態双方で発現していた。これらの結果により実際の糖尿病網膜症で網膜細胞が障害されていること、正常な硝子体内には細胞障害を抑制するメカニズムがあること、そして糖尿病では細胞障害抑制メカニズムを上回る障害因子の上昇があることが分かった。さらに糖尿病モデル動物における網膜細胞障害のメカニズムを検討した。高血糖状態で2ヶ月経過するのみでVEGFの発現上昇、プロテインキナーゼCβの発現上昇、DGK発現上昇、アポトーシスに関連するMAP-kinaseアイソフォーム上昇がみられた。網膜細胞障害の病態として高血糖に伴う代謝異常、酸化ストレスに引き続くアポトーシスが重要なメカニズムと考えられた。また、治療薬としてDGKを活性化する方法が今後の可能性のある研究方向と考えられた。
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