血液房水柵破綻は前眼部の代謝維持に大きく関与している。ぶどう膜炎等ではこの柵が破綻し、前房内蛋白が増加し、フレアが上昇する。我々は実験的ぶどう膜炎や臨床的にフレアが上昇する病態で、各種薬剤の影響を調べた。 ロリプラム(ホスホジエステラーゼ・タイプ4阻害剤)がラットのリポポリサッカリド(LPS)誘発ぶどう膜炎を抑制した。LPS誘発ぶどう膜炎はNF-kappa β translocationを介して病状がおこった。ロリプラムの抑制効果はiNOS合成とは無関係であった。有色家兎のプロスタグランジンE2誘発ぶどう膜炎を選択的COX-1阻害剤も選択的COX-2阻害剤も阻害した。それ故、家兎前眼部の炎症にはCOX-1もCOX-2も同時に関与していると思われた。臨床的にレーザー虹彩切開術後にフレアが上昇することは知られている。カルシウム・チャンネル・ブロッカーが血液房水柵破綻を抑制することは先に報告した。ベタキソロール点眼薬は眼圧降下作用とともにカルシウム・チャンネル・ブロッカーの作用があり、フレア上昇を抑制する可能性が考えられた。そこで、レーザー虹彩切開術の術前に、ベタキソロールを点眼したところ、フレア上昇は抑制された。他の眼圧降下剤はフレア上昇を抑制しなかった。臨床的にもカルシウム・チャンネル・ブロッカーの血液房水柵破綻の抑制効果が確認された。
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