研究概要 |
今年度は過去に報告されている緑内障モデルラットの中から,一番再現性の良いepiscleral vein結さつモデルを採用し,網膜および視神経乳頭部における各種分子の発現変化を免疫染色法およびマイクロアレイ法をもちいて検討した.網膜においては,緑内障進行期において,内顆粒層の神経細胞,視細胞層の細胞特異抗体の発現には変化を認めなかったが,網膜神経節細胞の減少に伴って,神経節細胞特異抗体の発現低下が認められた.また,ミュラー細胞特異抗体のglutamine synthaseには変化を認めなかったが,ミュラー細胞の活性化を示すGFAPの発現増加と,p27Kip1の発現減少が認められた.次に緑内障において特異的な形態変化を示す視神経乳頭部における主要構成成分であるアストロサイトの細胞死,細胞増殖について,Pax2,caspase3,BrdUを用いて検討した.眼圧上昇後3日でcaspase3の上昇が認められ,1週でPax2陽性アストロサイトの減少が認められた.BrdUの取り込みは眼圧上昇後2週で明らかな増加を認めたが,2ヶ月では減少しており,Pax2陽性アストロサイトの数も減少していた.この結果より,眼圧上昇早期よりアストロサイトの障害が認められ,早期には細胞増殖という代償機転が働くが,眼圧上昇2ヶ月では細胞増殖という形での代償は働かないことが示唆された.眼圧上昇後3ヶ月での視神経を用いたマイクロアレイによる解析では,細胞外基質,細胞周期関連分子,細胞接着因子などで発現の増減が認められた.眼圧上昇後3ヶ月では組織変化はすでに障害のサイクルにはいっていると考えられ,上記のアストロサイトにおける経時変化を参考に,眼圧上昇早期の代償機転の働く時期との比較によって緑内障性視神経障害発症因子の検肘を更に進めていく予定である.
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