研究概要 |
目的:活性酸素消去酵素であるグルタチオンペルオキシダーゼ(GPX)が網膜光傷害によって誘導されるか,また,網膜内での局在が変化するかどうか確認する。 方法:6週齢の白色ラットを明期12時間(80lux)暗期12時間の条件で2週間飼育した後,3,000luxの白色光を24時間照射して網膜光傷害モデルを作製した。GPXの発現は,免疫組織化学,Western BlotおよびNorthern Blot法で分析した。光照射による網膜の傷害は,網膜全層に対する外顆粒層(ONL)の比率で評価した。 結果:正常ラット網膜では視細胞内節にはGPXは見られず,視細胞外節と網膜色素上皮細胞(RPE)にわずかに反応が見られた。照射後12時間目,24時間目の網膜では,GPXが視細胞外節とRPEに誘導されており,特にRPEでは照射後7日目まで強い発現が持続していた。一方,視細胞外節に見られたGPXは照射後1日目には減少し,照射後3日目,7日目には見られなくなった。全ての期間を通じて内境界膜からガングリオン細胞層にかけて強い反応が見られたが,照射による変化はなかった。また,GPXは網膜の後極側に多く存在しており,網膜周辺部ではあまり見られなかった。GPXのmRNAは光照射により発現が増加していた。網膜全層に対する外顆粒層(ONL)の比率は,照射後1日目,3日目および7日目で正常網膜と比較して有意に減少しており,光照射による網膜の傷害が認められた。 結論:網膜光傷害によってGPXの発現が増加し,網膜内における局在も変化していた。この光照射によるGPXの変化は,光傷害に対する網膜の感受性によるものと考えられた。
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