昨年度に引き続き、網膜色素上皮における遺伝子発現を制御する方法を検討してきた。最近RNAを介したサイレシングが注目されている。RNAiは、dsRNAによってその配列特異的にmRNAが分解され、その結果遺伝子の配列が抑制される現象であり、哺乳動物細胞への適用も広まっている。今回我々は、RNAiの試行にショートインターフェアリングRNA(siRNA)として知られる21bpのdsRNAフラグメントを用い、遺伝子発現を抑制した。ニワトリ胚網膜色素上皮細胞の分化転換系においてMitf(microphthalmia-inducing transcription factor)が重要な役割を示すことは知られている。siRNAを用いてMitf遺伝子の発現を抑制し、形質転換に伴うmmp115(melanosomal matrix protein)タンパク質の発現変化を検討した。培養ニワトリ9日目胚網膜色素上細胞に、トランスフェクション試薬を用い、Dharmacon社製Mitf遺伝子siRNA、蛍光標識siRNAをトランスフェクションした。トランスフェクション後Mitf遺伝子siRNAの導入率、発現抑制効果を検討した。培養網膜色素上皮細胞の形質転換の指標としてmmp115タンパク質の発現を免疫組織学的に検討した。84.6%の培養胚網膜色素上皮細胞に蛍光標識siRNAが導入された。Mitf遺伝子siRNAトランスフェクション48時間後にMitfの発現が75.0%抑制された。Mitf遺伝子siRNA導入により、脱分化した培養網膜色素上皮細胞が増加し、mmp115の発現が抑制された。培養網膜色素上皮細胞にsiRNAの導入が確認され、Mitf遺伝子の抑制により、mmp115タンパク質の発現が抑制された。今後さらに網膜色素上皮の遺伝子発現を制御するシステムを検討し、網膜色素変性疾患の治療に結び付けていきたい。
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