網膜色素上皮に特異的に発現するプロモーターを持つdelivery system(伝達方法)の開発として、pp344プロモーターを組み込んだ非病原性ウイルスを利用することが妥当と考えられる。pp344プロモーター領域を単離とともに、pp344遺伝子産物の特性を調べることも重要と考えられたので、我々はニワトリpp344タンパク質に対する抗体を作製し、眼内における分布を検討した。免疫組織化学法では、ニワトリ胚においては網膜色素上皮および、神経網膜全域に抗体による染色がみられ、マウスでは、網膜色素上皮、網膜視細胞層から神経節細胞層に及んで染色が認められた。ウエスタンブロット法では、ニワトリ胚網膜色素上皮及び神経網膜において、65kDaの部位にバンドが検出された。pP344遺伝子産物は、網膜色素上皮細胞から神経網膜に存在することが示された。pP344遺伝子産物は網膜に分泌されることから、網膜における機能の解明が重要と考えられた。初年度に引き続き、網膜色素上皮における遺伝子発現を制御する方法を検討してきた。RNAiは、配列特異的にmRNAが分解され、その結果遺伝子の配列が抑制される現象であり、哺乳動物細胞への適用も広まっている。今回、々は、RNAiの試行にsiRNAとして知られる21bpのdsRNAフラグメントを用い、遺伝子発現を抑制した。網膜色素上皮細胞の分化転換系においてMitfが重要な役割を示すことは知られている。siRNAを用いてMitf遺伝子の発現を抑制し、形質転換に伴うmmp115タンパク質の発現変化を検討した。84.6の培養胚網膜色素上皮細胞に蛍光標識siRNAが導入された。Mitf遺伝子siRNAトランスフェクション48時間後にMitfの発現が75.0%抑制された。Mitf遺伝子siRNA導入により、脱分化した培養網膜色素上皮細胞が増加し、mmp115の発現が抑制された。今後さらに網膜色素上皮の遺伝子発現を制御するシステムを検討し、網膜色素変性疾患の治療に結び付けていきたい。
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