研究概要 |
網膜色素変性は遺伝的異質性の高い疾患で、すでに100以上の原因遺伝子変異が報告されている。X連鎖性網膜色素変性(XLRP)は比較的頻度は少ないものの、若年発症で重症例が多いため社会的にも重要な疾患である。われわれはX連鎖性網膜色素変性(XLRP)の原因遺伝子であるRPGR遺伝子について解析し、すでに日本人5家系においてエキソンORF15の変異(g.ORF15+753-754insG, g.ORF15+833-834delGG, g.ORF15+861-862insGG, g.ORF15+651-652delGA(2家系))を報告した。今年度はこれまでの研究に続けて、家族歴や症状からXLRPが疑われた互いに無関係の日本人23家系においてRPGR遺伝子エキソンORF15とエキソン1-19について検索を行った。その結果、宮崎県の1家系の女性患者に先に報告したものと同様のORF15のフレームシフト変異g.ORF15+651-652delGAを認めた。発端者の兄と母が罹患者で、常染色体優性遺伝と混同されがちな遺伝形式の症例であった。東京都の1家系ではエキソン1-11がPCRにより増幅されず、この部分の欠失が考えられた。エキソン12-19,ORF15は正常に増幅された。この家系の臨床症状は既に報告しているが家系内に男性発症例2例、女性保因者4例がおり、男性症例は早期発症で進行も早く、女性保因者は異常の明らかとなる時期や進行が遅く、症例間の臨床所見の差が大きいという特徴が見られた。またこれらの患者をstandard ERGやmultifocal ERGをもちいて電気生理学的に検討した。このように日本人XLRP23家系のRPGR遺伝子を解析し、これまで報告した家系と合わせ6家系のORF15のフレームシフト変異を、また1家系においてはエキソン-11の欠失が疑われる症例を見出した。この事実から、XLRPの発症にRPGR遺伝子が深く関与していることが示唆された。
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