研究概要 |
本年度の研究実績 1)シトクロムP4501B1(CYP1B1)は先天緑内障の候補遺伝子のひとつである.成人発症緑内障の症例についてCYP1B1遺伝子多型を検索した.緑内障83例および正常対照90例を対象とした.説明による同意を得た後、末梢血DNA試料を抽出し、CYP1B1遺伝子翻訳領域のアミノ酸置換を伴う多型(R48G, A119S, A330V, S331R)を検索した.それぞれの遺伝子型を、緑内障、正常対照の順に、置換ホモ/ヘテロ/正常ホモの例数で示すと、R48G:7/11/61、2/12/62;A119S:10/43/27、13/35/31;A330V:1/3/72、0/7/83;S331R:0/5/76、0/5/55であった.遺伝子型頻度およびアリル頻度について群間検定したが、統計的な有意差はなかった(Fisher's test、P=0.28-0.87).検討した限りでは、CYP1B1遺伝子は成人発症緑内障の罹病感受性に関与しない.2)先天網膜分離におけるRS1遺伝子の新規ミスセンス変異およびNorrie病におけるNDP遺伝子の新規ノンセンス変異を検出した.3)レーベル病の人類遺伝学的な背景を検討するために、D-loop領域の塩基配列を決定した.対象は独立の家系(九州26、本州8、沖縄2)のレーベル病発病者で、mtDNA G11778A点変異陽性の36例である.D-loop領域(np16002-np16490)の塩基配列データを系統樹作成ソフトで処理して、類似の塩基配列を持つアラインメント群(以下、群)に分類した.37種類(既知34、新規3)の遺伝子多型(一塩基置換)がみられ、枝分かれパターンから13群に分類された.これまでの報告結果と比較すると、mtDNA G11778A点変異で特化された集団のD-loop所見の概要はアジア人全体の概要と大差ない.D-loopの高い可変性と比べて、mtDNA G11778A点変異は保存性が高く、変異新生のイベントが古いことが示唆された.
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